風と雪

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「作者の意図」に関する考察―村上春樹のインタビュー記事の語用論的解釈

1 序論:

1.1 背景

作家が表現するということはどういうことなのだろうか。作家は自分の意図したことを全て、自分の作品の中に託すことはできるのだろうか。

 

1.2 これまでの研究:語用論

「意味」には「意図された意味」と「表現された意味」がある。前者は発話や文章を生み出す人間の思考・感情内から生み出された意味であり、後者はその意図が世界に表出された際の独自の意味である。

 

1.3 研究課題:作家は自分の意図したことを全て作品の中にゆだねることはできるのだろうか?

 

2 方法:優れた作家のインタビューの分析

対象:村上春樹川上未映子

データ:川上未映子による村上春樹のインタビューをベースにした文章

 

3 結果:作家が意図したことを超えて作品は動き出す

村上春樹によれば、自身が意図したことの全てを作品内にゆだねることは不可能である。自身が意図したことを超えて、作品の読者が作品の「意味」を作り出すことは頻繁にある。むしろ、村上春樹は自身の作品について「こういう意図があったんですよ」などとメタ的な解説はしない。あくまで作品は読者によって「表現」されるものである。

 

4 考察:「表現された意味」の可能性を認めること

作家は自身の意図により作品をコントロールできると考えるのではなく、作品内における言語が持つ有機的な「表現された意味」の可能性を信じるべきである。物語=作家ではなく、物語=作家×読者のような視点から、作品を眺めるべきである。しかし、それを念頭に置いた創作をするのではなく、「自分の創り出す作品には、自分の想像を超えた可能性がある」ということを認めることから始めるべきではないか。

 

5 結論:「意味」概念の再検討の必要性

作品及び物語とは、作家の意図した範疇を超えた世界を生み出す。

作家は読者の解釈や鑑賞を、全面的に肯定的に認めることが肝要である。

今後は、「意味」概念への理論的探究が課題である。

 

参考文献:

川上未映子村上春樹 (2017) 『みみずくは黄昏に飛びたつ』新潮社

T. K. スン 著、輪島士郎・山口和彦 訳 (1989) 『文学のプラグマティクス』勁草書房