風と雪

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良い演技者を創るには――平田オリザと関連性理論から考えたこと

1 序論:良い演技者とは、コンテクストが豊かな存在。

1.1 背景

良い演技者とはどんな存在なのだろうか。教育の文脈で「演技」の効用が謡われて久しいが、ただ単に教育の世界に「演技」を導入してもうまくはいかない。「演技」そのものについて考えることに意義がある。

 

1.2 これまでの研究:平田オリザの演技論

平田オリザによれば、良い演技者とは「コンテクスト」を豊かに持つ存在である。コンテクストとは従来の意味の「文脈」を超えて、人間の言語使用全般にかかわる複合的な概念である。

 

1.3 研究課題:コンテクスト概念のさらなる考察が必要である。

 

2 方法:コンテクスト概念を関連性理論に沿って考え直し、「良い演技者」について再考する。

 

3 結果:コンテクストとは、外の世界からの刺激に対して、顕在化できる想定の集合体のことである。


4 考察:良い演技者は豊かな想像力を持つ。

関連性理論によるコンテクストとは、刺激に対して自由に想定を顕在化できる力のことだった。例えば、いつも一緒にいる女性が今日はいつもと違う笑顔を見せていたとしよう。この「女性の笑顔」という刺激に対し、「元気がないな?」、「何かあったのだろうか」というように、次々に想定を広げていくことが、コンテクストの根源的な意味である。これはひとえに「想像力」と言い直すことが可能かもしれない。外の世界からの刺激に鋭敏に反応し(コミュニケーションであれば、他者からの顕在的刺激を間違いなく受け取り)、それに対して自身の経験などを踏まえて(認知環境を総動員し)、想像力を膨らませ、解釈していくことが、豊かなコンテクストを持つという意味である。

 

5 結論:「想定」のさらなる考察が必要。

良い演技者とは、外の刺激に対して様々な想定を顕在化できる、豊かな想像力を持つ存在のことである。

「想定」概念がまだ不明慮だが、ルーマンによる「意味」、「顕在的可能性」、「潜在的可能性」の概念が、これらをさらに明瞭的に描写できると考えられる。

 

参考文献:

井上ひさし平田オリザ (2003) 『話し言葉の日本語』小学館

平田オリザ (1998) 『演劇入門』講談社
平田オリザ (2012) 『分かり合えないことから』講談社
D. Sperber. & D. Wilson. 1995. Relevance: communication & cognition, Blackwell.