風と雪

作家/音楽家。 「小説家になろう」マイページ http://mypage.syosetu.com/682657/ Youtubeページ https://www.youtube.com/channel/UCaosrk1XssT-mho5n_S3jug

戯曲「クレアの幸せ」

本日刊行になった『短編小説 風雪の愛』のサブストーリーです。

よろしければ、お楽しみください。

 

☆☆☆☆☆

 

 

1)クレアの幸せ①

 

主要登場人物

クレア・レイニー・ユキ・モーア・マリア

 

20161221

 

ある宿屋にて

 

クレア「やっほー! レイニーいる!?」

レイニー「どうして俺がここにいることが分かったんだ!?」

クレア「この宿に入っていくのが見えたのさ!」

レイニー「……」

クレア「今日、暇!?」

レイニー「……え? まあ家庭教師はないけど……」

クレア「じゃあ、私ん家来て!」

レイニー「……え?」

クレア「いいから早く!」

 

10分後 クレアの家にて

 

クレア「3日ぶりだね、私ん家来るの!」

レイニー「……」

クレア「レイニー、私のこと、苦手でしょ!?」

レイニー「え!?」

クレア「隠さなくてもいいよ! 私、そんなのすぐわかるから!」

レイニー「いや……苦手じゃなくて……その……」

クレア「じゃあ質問変える! ユキのことどう思ってんの!?」

レイニー「え!?」

クレア「ユキのことだよ!」

レイニー「ユキは……いい人というか……」

クレア「それだけ!?」

レイニー「……それだけだ……」

クレア「だったら、施設にいたイケメンの性格いい人、ユキに紹介してもいい!?」

レイニー「え!?」

クレア「すっごいいい人! ユキとなら幸せになれるだろうな~」

レイニー「それは……ダメだ!」

クレア「……なんで、止めるの!?」

レイニー「……いや、その……」

クレア「く~! じれったいな! ハッキリ言いなよ!」

 

5分後

 

クレア「好きなんだったらなんで告らないの!?」

レイニー「……いや、別に……」

クレア「さっきの施設の人は嘘だけど、このままじゃ~ホントに誰かに告られちゃうよ~! あの子、モテるんだから!」

レイニー「……」

クレア「ホント、ウブなんだね! 勇気だしなよ!」

レイニー「……ユキは王子様を待ってるから……」

クレア「王子様!? ……ああ、なんか聞いたことあるな!」

レイニー「クレアさんも知らないのか!?」

クレア「その『さん』っての、これからは禁止ね! 深くは聞いたことないけど、昔助けてくれた『王子様』を探してるっていうのは聞いたけどね……」

レイニー「じゃあ、その人と……」

クレア「レイニーはそれでいいの!?」

レイニー「……」

クレア「あのさ~大事なのは他の人がどーかとかじゃなくて……レイニーがユキのこと好きかどうかじゃない!?」

レイニー「……」

クレア「まあ、しょせんその程度だったってわけか……」

レイニー「違う! 俺はユキを愛している……ユキが一日中頭から離れない……」

クレア「……だったら、いいじゃん! その想い大事にしなよ!」

レイニー「明後日、ユキの教会に行こうとしてた……」

クレア「明後日!? 明日じゃダメなの!?」

レイニー「明後日はユキの誕生日だから……」

クレア「あ! そうだった! ダメだ……ずっと施設にいたから、お祝いしたことなかったんだ……でもよく覚えてるね! スゴイよ!」

レイニー「俺と同じ誕生日なんだ……」

クレア「これまたスゴイや! 運命だよ、それ!」

レイニー「……ユキは大丈夫かな?」

クレア「だから言っただろ? ケロっとしてるって!」

レイニー「……」

クレア「じゃあ、明後日、告るんだね!?」

レイニー「……いや、告白は……」

クレア「く~! だんだん腹立ってきた! レイニーはどうしたいの!?」

レイニー「……ユキと一緒にいられれば、それでいい……」

クレア「ふ~よくわからないね……でも、いつまでもそんなんじゃだめだよ!」

レイニー「……分かってる……いつかは……」

クレア「ユキには花を贈ればいいよ!」

レイニー「花……」

クレア「なんか、花が大好きらしくてさ……それであんな仕事してんの!」

レイニー「花か……」

クレア「そうそ!」

レイニー「クレアさん……いや、クレア……ありがとう」

クレア「どうしたの!? 急に改まって……」

レイニー「いや、クレアは俺よりずっと昔からユキのこと支えてくれてたんだな……ありがとう……」

クレア「ぷっ! それって、ユキの恋人みたいなことばだよね!」

レイニー「いや! 違う! 正直なことばだよ……」

クレア「まあ、いいや! こっちこそありがと! ユキ、レイニーに再会できて、ホントに嬉しそうだったよ!」

レイニー「俺がクレアを苦手だったのは……ユキと仲良しだからだよ……」

クレア「うん!?」

レイニー「なんか、ユキのこと、俺より知ってる人が……なんかうらやましかったんだ……」

クレア「大変な人ね……これからライバルがどんどん現れても仕方ないよ!」

レイニー「え!?」

クレア「嘘ウソ! まあ、ユキは私の親友だからね! ユキがいないと、私だって独りぼっちなんだよ!」

レイニー「……」

クレア「ユキを生き返らせてくれて……ありがと!」

レイニー「いや、別にあれは俺の力じゃ……」

クレア「うんうん! でも、誰にお礼っていいか、わからないから、とりあえず、レイニーにお礼言っとくよ! ありがと! ユキが生き返らなかったら……」

レイニー「……」

クレア「私もレイニーと同じことしてたさ……」

レイニー「クレア……」

クレア「ユキが笑顔でいてくれるのが、私の幸せだからね……ふ~っ、さっきの撤回ね! 私の親友はユキとレイニーだけだから!」

レイニー「俺も入れてくれるのか……?」

クレア「もちろん! これからも3人で仲良くしようね!」

 

20161222

 

ユキ「クレア……ちょっと、付き合ってくれない!?」

クレア「どうしたの!?」

ユキ「明日、レイニーの誕生日なんだ! プレゼント買いたいんだよ~」

クレア「いいよ! 近くでバザーがあって、珍しいものが買えそうだから、そこ行こうよ!」

ユキ「うん!」

 

-----

 

マリア「もう、あのバカ息子は……さっさと告白すればいいのよ……」

モーア「あなたの息子さんですよ……」

マリア「もう奥の手を使うわ!」

モーア「奥の手!? え!? ダメですよ! それは現世とあの世をつなぐ石! それはいざというときにしか使ってはいけません!」

マリア「いざというときじゃない!」

モーア「……」

 

-----

 

10分後

 

ユキ「あ! この本いいかも! なんも書いてない本! レイニーは本好きだけど、こんなの持ってないんじゃないかな!?」

クレア「へえ、珍しいね……日記にでも使うのかな……?」

ユキ「これにしよう!」

 

-----

 

マリア「ユキちゃん! ナイスなものを選んだわ! これに息を吹き込もう!」

モーア「もう……どうなっても知りませんよ……」

マリア「あ」

-----

 

ユキ「あれ? 1ページ目に何か文字が書いてある……なんて読むの?」

クレア「『あ』だね……不思議な本だね……『あ』しか書いてない本って……」

ユキ「これにしよう!」

 

10分後

 

ユキ「せっかく、プレゼント買ったけど、レイニーどこにいるかわからないや……」

クレア「大丈夫! また、ぽわ~っと現れるよ!」

ユキ「そうだよね! うん! また会える気がする!」

 

-----

 

マリア「上手くいったわ! さあ、これでレイニーに告白するまで頑張ってもらうわ!」モーア「……」

マリア「まずは、『邪悪なる光の石』を壊してっと……あと、ユキちゃんには病気になってもらうわ!」

モーア「マリア様が恐ろしい……」

 

-----

 

教会にて

クレア(ユキとレイニーが結ばれますように……)

 

 

2クレアの幸せ②

 

主要登場人物

クレア・レイニー・ユキ・モーア・マリア

 

201724

 

教会にて

 

ユキ「……ただいま」

レイニー「……おかえり?」

ユキ「ごはん食べた?」

レイニー「ああ……ユキは?」

ユキ「私も食べてきた! じゃあお風呂沸かすね……」

レイニー「……」

ユキ「どうしたの?」

レイニー「……なんか、元気ないな?」

ユキ「え!? そうかな!?」

レイニー「いつもの笑顔と違う……」

ユキ「……」

レイニー「何があったんだ?」

ユキ「……」

レイニー「……まあ、何もなかったんなら、いいけどさ……」

ユキ「レイニーには何でもわかっちゃうんだね……」

レイニー「……何があったんだ?」

ユキ「……誰かに後をつけられてる気がする……」

レイニー「え!?」

ユキ「さっき、クレアの家に行くときも、ここに帰ってくるときも……誰かに後をつけられてる気がするんだ……クレアがその辺を探ってくれたんだけど……誰もいなかった」

レイニー「……」

ユキ「あ! でも、勘違いだと思う! それよりお風呂……」

レイニー「……花売りはしばらく辞めたらどうだ?」

ユキ「それは嫌! 私、何もしてない方が嫌……」

レイニー「……」

ユキ「……ごめんなさい」

レイニー「……じゃあ、俺も明日から一緒に花売りするよ……」

ユキ「え!? いいよ、夜の家庭教師の準備があるでしょ?」

レイニー「別に大丈夫だよ……朝早く起きるから!」

ユキ「……」

レイニー「うん?」

ユキ「えへへ……じゃあ、お願いする!」

 

201725

 

街で花売りをするユキとレイニー

 

レイニー「どうだ? つけられてる感じはあるか?」

ユキ「うんうん! 今は大丈夫!」

レイニー「……そうか」

子ども「お姉ちゃん!」

ユキ「あ! この前の子だね!」

子ども「お姉ちゃんにもらった花、お母さん喜んでくれてたよ!」

ユキ「ホント? よかった……」

子ども「これ! お母さんがお姉ちゃんに手紙書いたの! 今、読んで!」

ユキ「え……?」

レイニー「……」

子ども「『今』、読んでよ~!」

ユキ「……」

レイニー「……」

子ども「何だよ! もういいよ!」

ユキ「あ……」

レイニー「……」

 

夜、教会にて

 

ユキ「あの子、傷つけちゃった……」

レイニー「違うよ! あれは行き違いだ! 向こうも知らなかったんだし……」

ユキ「……文字が読めるようになりたい」

レイニー「え……」

ユキ「私、もう危険じゃないかもしれないけど……文字は読めないまま……それがずっと嫌だったの……」

レイニー「……」

ユキ「ダメ?」

レイニー「いいよ……特訓しよう!」

ユキ「え……今から? いいよ……レイニー、昼も夜も働いて疲れてるでしょ、明日でも……」レイニー「『今』したいんだよ……」

 

10分後

 

レイニー「……」

ユキ「ごめん……私、バカでしょ……」

レイニー「いや、俺の教え方が悪いんだ……ユキはバカじゃない!」

ユキ「うんうん……私がバカだからいけないの……私が文字を読めたら、人を傷つけないで済んだのに……」

レイニー「あれはだから……『行き違い』だよ! 本当にバカなのは……マルクとか、ジャックとかみたいな奴らだろ?」

ユキ「……」

レイニー「有能な人材じゃなくてもいい! 俺は、幹部試験に最年少で合格したけど、幸せにはなれなかったよ? 本当に頭のいいひとは、自分も幸せで、他人も幸せにできる人じゃないのか……?」

ユキ「……」

レイニー「……一度しか言わないから……俺はユキといれて幸せなんだ……だから……明日また頑張ろう!」

ユキ「……うん……ありがと……明日また頑張ろ!」

 

20172678910

 

昼間はユキとレイニーで花を売り、夜はレイニーが家庭教師に帰ってきた後で、文字の読み書きの練習をするが、一向に上手くいかない。

 

2017211日 夜、教会にて

 

レイニー「じゃあ、これは?」

ユキ「『あ』かな……?」

レイニー「これは『え』だ……うーん……」

ユキ「ごめん……私がバカだから……」

レイニー「バカじゃないって言ってるだろ? 疲れてるんだよ、少し休もう……」

ユキ「うんうん! 続ける! それより、レイニー、どうしたの? そのメガネ?」

レイニー「いや……最近、目が悪くなっただけだよ……」

ユキ「クレアが似合ってるって言ってたよ?」

レイニー「……そうか」

ユキ「はい、次の問題だして!」

レイニー「なあ……いいのか?」

ユキ「うん?」

レイニー「ストーカーがいるかもしれないのに……こんなことしてていいのか?」

ユキ「こんなことって! 私にとっては大事なことだよ!」

レイニー「わかってるよ……けど」

ユキ「わかってない!」

(沈黙)

レイニー「なあ、文字が読めなくたっていいじゃないか……もっと別の生き方だって……」

ユキ「それは文字が読める人の言い分!」

レイニー「……そんなに怒るなよ……俺だって、必死にユキのことわかろうとしてるんだから……」

ユキ「……」

レイニー「やっぱり、警察に行った方がいいんじゃないか?」

ユキ「いいよ……ハッキリした証拠もないし……」

レイニー「けど……」

ユキ「レイニーは心配しすぎ! はい、次!」

レイニー「……もうやめだ……」

ユキ「え……?」

レイニー「文字の練習はストーカーを捕まえた後だ……それまで……こんなのんきなことしてられないよ……」

ユキ「……」

レイニー「……」

ユキ「!!」

レイニー「ユキ! 何してるんだ? やめろ!」

ユキ「本なんかなかったらいいのに……こんな本……」

レイニー「やめろ! 本に八つ当たりすんな!」

ユキ「本なんか……大っ嫌い!」

レイニー「いい加減にしろ! 本が好きか嫌いかは読めてからにしろ! 文字が読めないくせに!」

ユキ「……」

レイニー「あ……ごめん……」

 

ユキは教会の部屋から出ていって、号泣する。レイニーはなだめようとするが……

 

レイニー(? 人影……)

レイニー、人影についていく。

 

レイニー「おい! ユキをつけてただろ? 誰だ?」

 

人影が姿を現す。

 

レイニー「……」

 

クレアの家にて

 

クレア「やっほー! って……レイニーだけ……?」

レイニー「ちょっといいかな?」

クレア「いいよ! 今、テレビ見てただけだし!」

レイニー「……」

クレア「暗いね……」

レイニー「色々あったんだけど……大きく言ったら2つ……」

クレア「マシな方から聞こうか?」

レイニー「……ユキを泣かしちゃった……」

クレア「!? それがマシな方? 何があったの?」

レイニー「ユキに『文字が読めないくせに』って言っちゃったんだ……」

クレア「……レイニー、目つぶって?」

レイニー「え!?」 

 

レイニー目をつぶる。そこへクレアの平手打ちが飛ぶ。

 

レイニー「……」

クレア「他の人ならいいけど……ユキ、そんなの慣れてるから……けど……」

レイニー「……」

クレア「レイニーには言ってほしくなかったな!」

レイニー「……ごめん」

クレア「私に謝ることじゃないだろ? で、もう1つは?」

レイニー「……ストーカーが見つかったんだ……」

クレア「え? いいことじゃない! で、警察に突き出したの?」

レイニー「いや……」

クレア「は?」

レイニー「あのストーカーの正体は……俺だったんだ……」

クレア「はぁ?」

レイニー「昔、本で読んだことがある……勇者は自分の感情を人の形にして、分身にすることができたんだ……怒りの感情で攻撃の魔法が使える分身を創ったり……悲しみの感情で人を癒す回復の魔法が使える分身を創ったり……」

クレア「うんうん」

レイニー「で……俺の感情が独り歩きして、ユキのストーカーを創ってしまったんだ……俺が……あまりにユキのことが心配だから……」

クレア「……」

レイニー「俺の分身は本体の俺に見られたことで、もう消えたけど……俺は、心配なんだ……ユキのことが……」

クレア「……分かったよ……レイニーがユキのこと、どんだけ思ってるかは分かった……けど……もう少し、信じてあげたら?」

レイニー「信じてるよ!」

クレア「いや、信じてないな……レイニーはユキにびくびくしてる……いつか、嫌われるんじゃないかってね!」

レイニー「……」

クレア「ねえ、どうしてユキが文字を読みたいって言いだしたか知ってる?」

レイニー「子どもを傷つけたから……」

クレア「それもあるけど……ユキはレイニーと同じ世界を見たかったんだよ! レイニーは本が好きだから、自分も本を読めるようになりたかったんだよ……」

レイニー「……そうだったのか……そんなことも知らずに……俺……」

クレア「でも、レイニーの思いは……ちょっと重たすぎるけど、本物だったってことは、ユキにも伝わってると思うよ! レイニーだって、ユキの見てる世界を見たかったんだろ?」

レイニー「え?」

クレア「あのメガネ……度がキツイ奴だよね? 昔、施設にそういうメガネしてた子がいたから、わかる! あんな度がキツイメガネかけて……レイニー、別に目も悪くないのに……」

レイニー「……」

クレア「あれで本を読んで、文字が読めない人の気持ちを理解したかったんだろ?」

レイニー「……まあ、うん」

クレア「行き違いだね!」

レイニー「……」

クレア「さあ! さっさと帰った! 帰った! 仲直りしてきな!」

レイニー「ありがとう……クレア」

クレア「大丈夫だよ! 昔言っただろ? ユキの笑顔が、私の幸せなんだよ!」

レイニー「……」

クレア「ユキを笑顔にしてあげて!」

 

クレアの家の玄関にて

 

クレア「ユキがもう1つ言ってた!」

レイニー「何を?」

クレア「レイニーのことばは美しいし、優しいけど……時々本当の気持ちが分からなくなるって! 本音が聞きたい! って言ってたよ!」

レイニー「……」

 

教会にて

 

ユキ「どこ行ってたの? 心配してたんだよ! もう帰ってこないかと……思っちゃった」

レイニー「ごめん……」

ユキ「私、レイニーに捨てられたら、どこにも居場所がないもん……」

レイニー「ごめん……ストーカーを捕まえてきたんだ……」

ユキ「え!?」

レイニー「近くに住んでいる若い男だった……もう警察に突き出したから大丈夫だよ……これで安心して、文字の練習ができる……」

ユキ「……もういいよ」

レイニー「え……?」

ユキ「……書けるようになったから……」

 

ユキ、「レイニ」と紙に書く。

 

レイニー「これ… …?」

ユキ「さっき、練習してたんだ……これだけ書けたら、もう満足!」

レイニー「ユキ、自分の名前も書けるのか?」

ユキ「うんうん! これだけ!」

レイニー「…………」

ユキ「これで仲直りだね……?」

レイニー「ごめん……あ、ちょっと散歩してきていいか?」

ユキ「え……?」

レイニー「帰ってくるから! ちょっと、考え事だよ!」

ユキ「わかった……いってらっしゃい!」

 

夜、就寝する前の時間、ベッドにて。

 

ユキ「私、窓側って初めてだね!」

レイニー「そうだな……」

ユキ「ねえ、手見せて?」

レイニー「え? ああ……」

ユキ「あの時と同じ……靴貸してくれたときと同じきれいな手……」

レイニー「よせよ……照れるよ……」

 

ユキ、レイニーの左手の傷痕に気づく。

 

ユキ「!!」

レイニー(まずい……)

ユキ「……」

レイニー「昔、だよ……へゲル団にいたときにつけたんだ……今は……やってないよ……」

ユキ「……」

レイニー「……」

ユキ「隠し事するのは仕方ないと思う……けど、一度言ったことばは元には戻らないよ……」

レイニー「……」

ユキ「信じるよ?」

レイニー「……ごめん、さっき外でつけたんだ……」

ユキ「……」

レイニー「……ごめん」

ユキ「手見せて!」

レイニー「え?」

ユキ「私はレイニーの苦しみは理解してあげられない……一生無理だと思う……」

レイニー「……」

ユキ「けど、こうやって手握ることはできるから……」

レイニー「……」

 

-----

 

マリア「ダメね……あの子、もっと強くならないと!」

モーア「次は何をされるんですか……?」

マリア「モーア! 私のために動いて!」

モーア「はぁ……」

 

-----

 

201742日 レイニー、家庭教師の帰り道にて

 

レイニー「……?」

モーア「レイニーだね?」

レイニー「誰だ?」

ザリア「ごめんなさいね……」

レイニー「?????」

ザリア「さあ、言って? あなたは誰のために生きてるの?」

レイニー「……ザリア様です……」

モーア「さあ、行こうか? 君が強くなるための、壮大な物語の始まりだ……」