風と雪

作家の和泉敏之のブログ

短編小説 陽花なる家族

登場人物
サニー、クレア、ユキ、レイニー
 
2018年2月27日の夜、バーにて
 
ユキ「何〜話って?」
レイニー「サニーのことだよ」
ユキ「サニーがどうかしたの?」
レイニー「クレアと一緒に住んでるだろ?」
ユキ「うん、それで?」
レイニー「その、なんというか……」
ユキ「どうしたの?」
レイニー「サニーはクレアのことが好きなんだ……」
ユキ「うん、それで?」
レイニー「いや、それだけだ」
ユキ「別に普通の話じゃない?  あ、紅茶お願いします!」
レイニー「ユキ、聴いてくれ。ただ『好き』なだけじゃないんだ」
ユキ「つまり……恋愛感情として好きってこと?」
レイニー「……そうなんだ。ユキはどう思う?」
ユキ「……この国では女の子同士の結婚とか反対されてるし……」
レイニー「俺はなんとかしたいんだ!」
ユキ「でも……」
レイニー「ユキ……」
ユキ「私だって応援したいよ! でも後が不安なの……お互い傷つかないかって……」
レイニー「どうしようか……」
 
同じ夜、サニーとクレアのアパートにて
 
サニー「お帰り、クレア!」
クレア「ただいま、サニー!」
サニー「ごめんね、お家に住ませてもらって……」
クレア「急にどうしたの?  気にすんなって言ったじゃん!」
サニー「悪いな〜って思って」
クレア「気にすんな!」
サニー「ねえ、ちょっと座って?」
クレア「うん」
サニー「話があるの……」
クレア「何?  お金ならいいよ!  花売りでなんとかなってるっさ!」
サニー「お金じゃないの! もっと大事な話!」
クレア「どしたの?  急に……」
サニー「私……」
クレア「……」
サニー「私、クレアのことが好きなの!」
クレア「あはー照れるな、そんなの!」
サニー「真面目に聞いて!」
クレア「まじめさ〜  私だって……」
サニー「愛してるの!」
クレア「……うん?」
サニー「レイニーがユキを想ってる気持ちと一緒なの!」
クレア「えっと……」
サニー「クレアと結婚したいの!」
 
クレア、急に立ち上がり、外へ出て行く。サニーは何もできずその場で泣き崩れる。
 
次の日の朝、レイニーとユキの住む教会にて
 
(ドアをノックする音)
ユキ「はーい!  あ、サニー……」
サニー「ちょっといいかな?」
ユキ「うん、もうすぐ花売りに行くんだけど……」
サニー「レイニーはいる?」
ユキ「いるよ。レイニー!」
レイニー「あ、サニーか。どうしたこんな朝早く」
サニー「ユキ、レイニー、今日からここに泊めてくれない?」
レイニー・ユキ「え!?」
サニー「昨日、クレアに告白したの……」
 
サニー、昨夜のことを話す。レイニーとユキは氷の冷たさほどの悲しみと共に許可をする。
 
昼、ユキは花売りに出かけた。
サニー「クレア、もう戻ってこないかも?」
レイニー「いや、そう悲観するな。クレアだって大人なんだ」
サニー「もし、クレアに会って結婚できないって言われたら、私……」
レイニー、頭を抱える。
サニー「私、この町を出て行く!」
レイニー「待てよ! そんな衝動的に動くな!」
サニー「レイニーは分かってくれるよね?」
レイニー「サニーの気持ちだろ?」
サニー「さすがだね……でももう限界。クレアと一緒にいるだけで苦しいの。頭も痛くなるし、胸の辺りも痛い。とにかく痛いの……」
レイニー「とりあえず、考えるなっていうのは無理だから、ここでしばらく休みな」
サニー「ありがと……」
 
夜、レイニーは家庭教師を休み、ベッドで横たわるサニー見つめる。そこへ、ユキが帰ってきた。
 
ユキ「ただいま!」
レイニー「おかえ……」
クレア「お邪魔します」
ユキは花売りの途中でクレアと合流し、強引に連れてきたようだ。
サニー「クレア……」
クレア「サニー、昨日のことだけど……」
サニー「うん……」
クレア「やっぱり結婚は無理!」
サニー「(涙ぐみながら)うん……」
ユキ「サニー……」
サニー「じゃあ、私この街を出て行くね……」
クレア・ユキ「え!?」
レイニー「……」
クレア「私、苦しいの。クレアを見てるだけで苦しい。遠く離れないとこの感情は収まらない……」
クレア「いやだ……」
サニー「(涙を流しながら)ごめんね……」
クレア「いやだ! サニーと離れるなんて嫌だ! 私たち、ずっと一緒にいたじゃない! 家族なんだよ! サニーがいなくなったら私、私……」
ユキ、涙を一粒流し雪に変わる。
クレア「サニーがいなくなるんだったら、私一生誰とも結婚しない! 」
サニー「家族……」
クレア、両足を地面に落とし、泣き崩れる。
サニー「……私たち、『家族』なんだね……」
クレア「……そうさ、家族だよ。お金じゃ買えない家族だよ!」
サニー「嬉しい……ありがとう」
クレア「(涙をぬぐいながら)気にすんな!」
 
クレアは一輪の花をサニーに渡した。その後、彼女たちは手を繋ぎながら一緒にアパートへ帰った。2人の背中を見届けたレイニーとユキはバーを訪れた。
 
ユキ「なんとかなって良かった……レイニーが話してくれたおかげだよ」
レイニー「いや、どうしたことでもないよ……それより」
ユキ「うん?」
レイニー(俺が本当に幸せになって欲しいのはユキなんだ……次はユキが家族になる番だ)
 
続く