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風と雪

和泉敏之のブログ

人生100年時代を生きるためにーーLIFE SHIFTを手掛かりに

先日、金融庁が「人生100年時代」に関するレポートを発表したことは記憶に新しいところだと思います。この中で、老齢年金のみに頼るのではなく、自助努力でおよそ2000万円の資金を準備することが謳われていました。

 

この発表に市民からは非難の声が続出しました。結局、「年金破綻」はないと政府が発言しましたが、この未来の予測不能の時代に、不安を煽られた市民が多かったのだろうと思います。

 

今回、『LIFE SHIFT』という本を手掛かりに、人生100年時代をどう生きるか(≠生き残るか)について言及したいと思います。

 

人工知能の到来で人間にしかできないことを>

人工知能の到来が叫ばれて久しいですが、多くの労働がこの人工知能に奪われることも有名な話になってきています。

 

その中で、本書の筆者は人工知能を超えた人間にしかできないことをなすべきだと述べています。それは(1)専門知識、(2)帰納的推論、(3)コミュニケーションだと語っています。

 

従来、人間は1つの専門的な教養を身につけ、武器にしてきましたが、それらをマルチ的に組み合わせた専門知識が必要になるのではというのが私の愚見です(「パラレル・キャリア」ということばも浸透してきましたね)。

 

帰納的推論とは、様々な事象を組み合わせて新たな発想を得る手段です。人工知能にはこの想像(imagination)がまだまだ欠けており、このような力がますます必要とされることでしょう。

 

コミュニケーションとは複雑な概念ですが、ここでは単純に「相手の気持ちを読み取り、適切に応答する」という定義にしておきます。これは何も高騰のコミュニケーションに限らず、SNS謳歌している時代では、文字によるコミュニケーションも大切になってきます。使い古されたことばですが、「思いやり」がますます大切になってくるのではないでしょうか?

 

<無形資産の重要性>

これまで人間はお金を始めとした「有形資産」の取得に執着心を燃やしすぎていたのではないかと思います。100年時代を生きるためには、「無形資産」が重要になってくると著者は詳述します。

 

ここでの無形資産とは、(1)生産資産性、(2)活力資産、(3)変身資産の3つの要素から出来上がっています。

 

生産資産性とは、所得を増加させるのに役に立つ要素のことです。特に、知識は重要な資産になると思われます。特に著者は、経済学をはじめとした金融リテラシーを身につけることを推奨しています。また、現在の支出を抑えることにより、未来の支出も抑えられるのは理の当然でしょう。

 

活力資産とは、肉体的・精神的な健康幸福を意味します。やはり「身体が資本」というわけですね。身体を壊してまで激務に耐えるのは果たして「幸福」なのかと思わざるを得ません。私の尊敬する村上春樹さんも、自身の文体を鍛えるために、トレーニングを欠かさず行っているそうです。身体と精神という二項対立で考えるのではなく、1つの「己」を磨くのに、健康は大切だというのが私の愚見です。

 

変身資産とは、早い話が人的ネットワークなどを意味します。これまで人間は就学→就労→引退という3つのステージから人生を送っていました。人生100年時代では、そのステージがマルチ化し、様々な状況に身を置かれることを第一前提に考える必要があるようです。そのために、多種多様な人間との繋がりを持つ「ネットワーク」を広げることが重要だと言われています。現代では、オフラインのみならず、クラウド上でも関係性を広げることができるため、そうしたリテラシーを身につけることも大事でしょう(本書ではクラウドソーシングサイトを中心としたギグ・エコノミーがこれからますます充実すると予測されています)。

 

<レ・クリエーションの時代>

以上、記述してきたことが、LIFE SHIFTから学んだ人生100年時代を生きるヒントです。人工知能などの要素により、人間は1〜2日のみフルタイムで働くという生き方も予測されています。その他は、「レ・クリエーション」と呼ばれる、いわゆる「クリエイティブ」な時間に当てることも大切になってくるのではないでしょうか? 何かを生み出すという行為は人間の想像力から巻き起こる「はたらく(はたをらくにさせる)こと」です。これまで職業になっていなかった分野を開拓するようなパイオニア精神も必要になるかもしれません。

 

ともかく、人生100年時代を迎える日本をはじめとした国家では(もちろん日本がその手本になるべきなのでしょうが)、充実しながら活き活きと「生きる」ということを考えることが急務のように思えます。

 

参考文献
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著、池村千秋 訳(2016)『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』東洋経済新放社