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風と雪

和泉敏之のブログ

和泉敏之のプロフィール

和泉敏之

 

 哲学者

 

  フリーランスライター

  大阪大学 適塾記念会 会員    (2022/04〜)

       四国大学 オープンカレッジ 会員 (2022/04〜)

 

  学びの場をつくる学校  会員

  一般社団法人ことばの教育 会員

  ニクラス・ルーマン研究会 会員

  言語政策研究論文読書会 会員

  全国英語教育学会 会員

  四国英語教育学会 会員

  オンライン書店・風と雪

  小説家

  思想家

  音楽家

  詩人

  写真家

 

【ひとこと】

 ことばを物語・詩・音楽・文化の融合の観点から探究しています。また、批判的応用言語学や戦後史にも興味を持っています。

 

【学歴】

 東京大学MOOC・Interactive Teaching    修了(2021年7月)

 広島大学教育学部・英語文化系コース 卒業(2009年3月)

 香川県立坂出高等学校 卒業(2005年3月)

 

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※コメントは承認制にしております。ご了承ください。

※本ブログにおける見解は和泉敏之・個人のものです。

風雪の平和

風雪の平和
 和泉敏之・著

1. 魔王の記憶
2. 魔物の感覚
3. 風雪の平和


1. 魔王の記憶

むかしむかし、あるところに4人の勇者がいました。火の勇者、水の勇者、土の勇者、
そして風の勇者。彼らは世界を滅ぼした魔王を倒し、英雄になります。この話は何千年を隔てたいまでも語り継がれています。
 しかし、話はそう単純ではありませんでした。これから勇者と魔王に起こった過去の世について話していきたいと思います。

〈登場人物〉
魔王(デビル)、風の勇者(トッシュ)、火の勇者(ジョー)、水の勇者(アイリ)、土の勇者(エリー)

(1) 母と4人の子ども
(2) 魔界
(3) 勇者の誕生
(4) 魔王
(5) 勝者の悲劇

(1) 母と4人の子ども

 ある日空から4つの光が差し込んだ。暗闇の空から差し込んだ。それは人の形になり、赤子になった。私は何故かこの子どもたちから離れられなかった。私だけがその光景を目にしたのだと直感したからだろうか。いや、どうだろう。私は20歳の若い女性に過ぎない。どうして突然4人もの知らずの子を育てられようか。しかし、何かを育てたい。これが私の性分だった。この世界は何かを生み育てる習慣がない。みな、自分のことで必死だ。赤子を産めば、仕方なく親の顔をする人々。私はそうありたくなかった。自分の手で自分と向かい合わせのものを育てる。これは私にかけられた好機だと勝手に考えた。
 この4人の赤子にそれぞれ名前をつけた。女の子にはアイリとエリー。男の子にはトッシュとジョー。そして一人で切磋琢磨しながら、やがてはこの子たちに囲まれて愛すべき日々を送る。そう願っていた。いや確信していた。だが、それは大きな間違えだった。

(2) 魔界

 子どもたちは10歳になった。私は少しずつ身体を病のような何かが蝕んでいるのを感じた。この世界は2つの球体がくっついたような形態をしている。一つはこの世界。みな忙しなく生きる世界。もう一つの世界には誰も辿り着けない。人々は噂した。そこへいけば、幸福、名声、富が手に入るに違いない、と。だが、私はそんな他者から受け取る褒美より、自分の手で生み出すことの方に重きを置くのだ。
 ある日のこと。子どもたちが何やら話している。目にすると、ジョーが火を、アイリが水を自分に手の中から生み出していた。火は水によって消された。なんということだろう。この愛すべき子どもたちは自分で何かを生み出す力を持っている。私は誉に湧いた。
 エリーが眼を閉じると、あたりが土一体となった。トッシュが手を出して、それを風によって飛ばす。このような能力は他に聞いたことがない。
 すると、ジョーが言い始めた。「僕たち、魔界から来たんだよね?」魔界? 何を言い出すのだろうか。「記憶に刻まれてるの。魔界っていうもう一つの世界からこの世界に降り立ったの」エリーが土に手をやりながら同調する。魔界とは、何だろうか。富や名声が手に入るあの世界のことだろうが、意味がわからない。
「お母さん、いつか魔界に連れて行ってね?」アイリが口を開く。「魔界の王になれるよ、お母さんなら」トッシュだけは何も言わなかったが、王とはどういうことだろうか。4人が力を合わせれば、もう一つ世界への扉が開く。そうも言っていた、私は腹部に痛みを少し感じながらも、そうね、いつかね。と声をかけるだけにした。

(3) 勇者の誕生

 家代わりの洞窟近くに巫女がいる。彼女に話を聞いてみることにした。「魔界。もう一つの世界。そこには魔物が住んでいる。あなたの子どもはそこから派遣されたスパイみたいなもの」私は信じられなかった。時折事件になる、魔物に人々が襲われたということは有名な話だ。魔物は世界の接点が時折開くのを契機に、こちらの世界にやってきているのだという。そしてそこにはデビルという人間の形をした魔物の研究者がいる。彼により、子どもたちは生産されたのだという。生産。誕生だと言いたいが、巫女は不思議な力のことを指し示した。それが魔界の力の証拠だという。私はとうとう病が悪化し、洞窟で寝込んだ。
 子どもたちが私を心配そうに見つめる。トッシュは口数少ない子だが、こう言った。「もう一つの世界に行こう? もう僕たち15歳だよ。きっと魔界でお母さんを直す何か手がかりが見つかるよ?」3人も賛同した。「だめ、行かないで……」魔界に行けば何が起こるかわからない。私は断片的な知識を拾い集めてそう告げた。「大丈夫。魔法があるもんね?」
 エリーが魔法と名付けた力を指していう。「お母さん、待っててね?」アイリが笑う。今回は、ジョーだけは何も言わなかった。
 この世界の住人はこの4人の力を目にして膝まづいた。彼らを勇敢な者として魔界―住民はもうひとつの世界とだけしか聞いていないーへと期待をかける。やがて、海を越え、小さな島についた。小さく映えた木の子どものような植物がある。そこから黒い光が4人の胸に刺し、彼らは倒れた。

(4) 魔王

「君たちをそんな目的で送り込んだのではない」研究者の居所へ容易に着いた。ここは魔界である。4人はデビルに対峙した。「だが、1つだけその女を救う方法がある」トッシュがどうするの? とせがんだ。「魔物にするのだよ」4人はギョッとした。「私のかわいいスパイを育てられる女だ。魔物になれば、素晴らしい力を持つことだって容易だ」4人は顔を合わせた。「それで、お母さんが救われるのなら」ジョーが頷いた。
 4人は薬を手にし、母親の元へと戻った。魔界には大きな老いた木が生えていて、そこが2つの世界を結ぶ場ということだった。トッシュとジョーが意識朦朧とする母を抱え、アイリとエリーが薬を飲ませた。何度も口から溢れるが、なんとか飲み干した。すると、彼女はもう人の形をしていなかった。目は真っ赤になり、こう言った。「よくやったわ、あなたたち。私は魔王として永遠のパワーを得ることができた」4人は一気に彼女から後退りをした。「この世界に魔物を送り、人間を根絶やしにする」アイリは泣いていた。「お母さん!?」
母は笑った。「魔王と呼びなさい。いや、デビルの薬で手にしたこの魔力。デビルと同じ名を与えてもらおうかしら?」
 どうしたらいいのだろう? 4人は愛すべき母を殺せない。元に戻すような術も知らない。ただただ圧倒的なアウラを持つこの〈デビル〉に立ちすくんだ。そしてデビルは手から火を生み出し、それに生み出した土をかけて、またもや生み出した水でそれを消した。子どもたちはその灰を凝視して狼狽するしかできない、「もちろん風も巻き起こせるわよ? やってみせようか? これがあなたたちの母が望んだことでしょう? 記憶に残っているわ。何かを生み出したいっていう願いを持っていた……」すると突然トッシュが叫び始めた。今まで聞いたことのない強く大きな声で。そしてあたりは嵐に包まれた。彼はデビルの手を握り、他の3人とともに吹き飛ばされた。名指せない場所へ。世界中が嵐に満ちているからだ。

(5) 勝者の悲劇

 残骸。至る所に何かの残骸。私はその真っ黒な空間を占める一部分に過ぎなかった。意識は途切れ途切れ。やっとのことで、手を膝にやりながら起き上がる。目の前には微かにトッシュが倒れているのが見えた。頭痛がする。私は彼の髪を撫でた。愛しい、我が子。結果的に、世界を滅亡させるに至ってしまったが、これで良かったのかもしれないと考慮した。
 だが、片付けるべき仕事がある。そのために、我が子の息を確認してから起き上がらせた。彼は怯えている。「母さん? ここはどこ?」その震える声に私は思いつくまま、だがどうしても嘘はついていないと感じることを伝えた。「世界は滅亡した。ここはどこの世界でもない。ここにいるのは私とあなただけ……他の子は死んだわ」彼は、トッシュは涙を流し始めた。その哀れながらも恋しく思う姿にやっと気づいた。「私を殺して?」「え……?」やはり、彼はまだ生きることへの現実感を捨てていない。「私があなたを殺す」「やだよ、そんなの」私はうっすらと見える彼を抱きしめて告げた。これで本当に終わるのだ。「生まれ変わったら、こんな悲劇起きないようにしようね?」トッシュは涙をこぼしながら、ただ頷いた。

※※※※

ミユ「うーん、なんだか変な夢見たな……」
「ミユちゃん?」
ミユ「誰!?」
「私よ…」
ミユ「あ、おばあちゃん!?」
マリア「久しぶりね、ミユちゃん!」
ミユ「どうして? ここは……どこ!?」
マリア「ユキちゃんの記憶の中」
ミユ「ママの……?」
マリア「ミユちゃんの意識にアクセスして、ユキちゃんの記憶と繋いだの、っていっても意味わかんないわよね?」
ミユ「なんか、魔法使ってる?」
マリア「そう! 今まで見たのがユキちゃんの前世の記憶。ごめん……残酷なもの見せて……」
ミユ「こわかった……」
マリア「ごめんね……でも、ミユちゃんには見せる必要があったの!」
ミユ「どうして……?」
マリア「先に話をさせて? 世界が滅んで、風の勇者とデビルが亡くなったあとのこと」
ミユ「うん……」
マリア「それで世界が滅んだ後、世界はそれぞれ引き離されて、魔界は地獄へと変えられた。あと、現世とは別にもう一つの世界が作られたの」
ミユ「もう一つ?」
マリア「それが黄泉の世界」
ミユ「あ!」
マリア「その世界を作った人がいる……」
ミユ「かみさま?」
マリア「そうとも呼べるわね……でもあなたの知ってる人」
ミユ「?? どういうこと? 大昔の話でしょ?」
マリア「……」
ミユ「おばあちゃん?」
マリア「あなたなの……」
ミユ「へ!?」
マリア「あなたが黄泉の世界を作ったの!」

つづく。


2. 魔物の感覚

マリア「古代の人たちが持っていなかったもの……まずは生み出す力」
ミユ「だから……私が……生む魔法を……?」
マリア「泣かないで、ミユちゃん! 大丈夫だから! あと……」
ミユ「泣かない……あとは?」
マリア「ミユちゃんだけが使える魔法……ミユちゃんにとって大切なもの……」
ミユ「時間……」
マリア「うん。そうだな……神さまって呼ぶね? 神さまは人々に時間を与えた。これで現世には四季が訪れるようになった……」
ミユ「うん。あれ?」
マリア「そう、全ては……」

(1) 勇者へ
(2) 傷
(3) 魔王へ

(1) 勇者へ

 ほろ暗い洞窟から外を見つめる。人人が忙しそうに世間を作っている気配が窺える。決
めたたのだった。今日。この洞窟から外に出ていく。目的は一つ。レイニーという男に会うためである。しかし、なかなか足が動いてくれない。外へ外へと意識ばかりが先行して、身体は暗闇の中にある。どうしようか。やめようか。いや、今日だけ。今日こそレイニーに会いにいく。そのために今まで苦痛の日々を送ってきたのだから。
 私は左足のケガを気にした。本当に動けるのだろうか? レイニーの居住地は聞いていた。この洞窟に入ってきたことのある女性が、何やら教会に奴が住んでいると呟いていたからだ。それだけを当てにして、この暗闇から外に出ていく。そう決意したものの、まだまだ若き私は、自由に行動する術を知らないようだった。
 この洞窟にはかつて邪悪なる光の石というものがあった。それは先程話した、女性に壊された。私が隠れている目の前で。私はそれを守っていたから、思わず彼女に襲い掛かろうとした。しかし、彼女の後を追うように、別の女性が中に入ってきてためらった。これが私だ。臆病でまるで子犬のようだ。だが、見かけは子犬ではない。狼のような様相をしている。銀色に包まれた私の毛並みは冷たい洞窟の風に揺れる。私はかつて現世に住んでいた魔物の生き残りだった。

(2)傷

 魔物は勇者という4人の若者が皮切りとなり、魔界が現世から引き離されたことにより、殆どがこの地上に残っていない。生き残りの魔物の一族は「ダークスメル」と自身たちを名付け、この現世に生き延びようと心がけた。だが、次々襲いかかる天災、そして人間が我々の風貌を恐れて、我々の祖先を殺していった。いつしか、生き残りは私を産んだ母と父と、その父の母だけになった。母は私を身篭り、私を洞窟で育てた。ここには邪悪なる気が集められていて。人々は滅多に入ってこない。入ってきても威嚇的な叫び声を父があげることにより、それだけで人々は逃亡していった。父は強い。私もそうなりたい。だから、外の景色の経験を吸うことを試みた。
 人間はすぐに私を見つけ、私を取り囲み、攻撃を加えてきた。なす術もなく撃たれる私。そこへ父と母が向かってきた。父は懸命に人間と闘い、母は私の身体中に居着いた傷を舐めた。だが、父の傷は鋭く、そのまま私たちに眴をして、対抗し続ける。母は私を連れ、元の場所へと帰った。血の滴る匂いに私は恐怖という念を知った。祖母が身代わりになり、魔法で私を救った。自身は絶命した。私の傷は癒え、左足にかすかに残党が残るだけになった。母は私を叱らず、ただ外へは出るなと言い付けた。父はどうしたか。私は彼女に尋ねた。もう父の気は消えた。私は自分の愚かさと悲しみに泣きじゃくった。母の身体が私を包み込む。
 やがて年月は過ぎ、勇者の生まれ変わりがこの街にやってきたと聞いた。人々の噂話は耳の良い我々の聴覚を刺激する。彼は「レイニー」という人間界で「雨」を意味する名を名乗り、どうもマフィアという謎の人間の団体に入っていて、この街に安住しているという。よくわからないが、勇者の存在のためにこのダークスメルは貧相に生きていくしか方法を知らないようになった。このままでは我々も根絶やしにされるかもしれない。だから、母は私を連れて、別の隠れ家を探すことを決めた。いつか外へ出よう。ただ、勝手な行動はするな、私から離れるな、という母の教訓を守る限りにおいては、である。私は従うことにした。
 私はいざという時に構えて、自身の傷を癒した。肉体と精神。そんなある日、黒い物体が洞窟の外に置かれてあった。私はそれに近づくと、母が身を挺して私を放り投げた。そしてその物体とともに母は爆破の火に包まれた。私は理解できず、ただ水を汲んでは火を消すに努めたが、母は息をしていなかった。私は洞窟の奥へ進み、叫び声を上げた。外から人間の声がする。「レイニーはどこだ?」レイニー。奴か。私の恨みはただその「レイニー」にだけ集中した。いつか殺害する。私は恨みを機動力にして、生き続けた。

(3)魔王へ

 雨の降る夜。私は洞窟からとうとう離れ、教会へと歩いた。左足が重い。だが、根
念という味方は私を教会へと辿り着かせた。外に人が出てきた。それを私は草むらで見つめていた。男と女が星を見ている。人間とはどうしてこうも呑気なものなのか。星を見て何になる? 「レイニー、あれはなんて星?」レイニー。奴だ。私はほぼ無意識の責任において、襲いかかった、すると、風が吹いて、私の身体を静止した。
「さっきから見ていただろう? 気づいてたよ?」レイニーは暗く呟いた。「ま、魔物?」
隣にいる女性がきょとんとして呟く。それでも向かっていく私だが、彼らは何もせず、ただ周りに風が集まり、それだけで私は圧倒された。これが勇者のパワーか。私は自分の無能さを呪い、殺すように仕向けた。「ひどい怪我! 待って!」女性が教会へと走っていった。私はうつ伏せになったまま、レイニーを見つめていた。まるで汗をかいているように、だが汗などかかずに困惑したまま私を見つめている。「はい! 手出して?」私は殺される覚悟で左手を差し出した。すると、女性が気の棒を差し出して、明るい光が集まってきたのだ。魔法。これが使える人間などほとんどいないと聞いていたのだが。私の傷は癒えた。
「サニーを呼んでくれないか?」「エンデにいるよ?」「黄泉の世界で魔物と交信する魔法を身につけたって昔聞いた」「ホント? すぐ連れてくる!」人間たちの言語は光の発信となり、私の耳の中へと誘われる。そしてそれらは理解ができるよう、溶解されていった。
 別の女性がやってきて、恐る恐る近づいてきた。私はうつ伏せに眠るフリをしていた。何か呪文を唱えている。この光の信号は理解できなかった。「うん。この子の思ってることならわかる。けど、お互いに意思疎通はできないかも……」「何を考えてるの?」女性たちは大急ぎのように語り出す。私はそれを契機に、自分の人生を振り返っていた。そのまま、そのイメージやら内言やらが、女性の口から発せられる。レイニーを殺すために来た。それは勇者の生まれ変わりだからだ。魔物は人間の意を理解はできるが、伝えるための術を持たぬ。魔物はそして、人間に滅ぼされた。あの日。母の死により、私一人になったのだ。
「・・・したちをおそわない?」なんだろうか? 最初の女性が何か話してくる。「私たちを襲わない? 一緒に暮らそうよ?」ユキと呼ばれたこの女性は、なんということか、私とともに暮らそうと言っている。だが、魔物と人間は相対するもの。そんなことはできない。そう考えていた。「私はあなたたちの王なの……」うん、何を言っているのだ? ユキという女性を睨みつけると、彼女は目をへの字にして屈託のない笑顔を見せた。「私、魔王の生まれ変わりなの!」

つづく。


3. 風雪の平和

ミユ「ママの悪の魔力を弱めるために……」
マリア「そして。真っ赤になった目。傷ついたユキちゃんのその眼を癒すために、涙が雪に変わるようにしたの。そして、あなたはやがて現世を生み出した……」
ミユ「知らないよ、そんなこと! 私、私……」
マリア「大丈夫だから……聴いて? もう少しだけ」
ミユ「うん……」
マリア「人はね、亡くなると黄泉の世界にいくけど、魂のちぎれた部分があちこちに飛んでいくの」
ミユ「魂?」
マリア「それは大地になったり、海になったり、草原を耕したり……その魂のかけら? みたいなものかなぁ? それが今のミユちゃん!」
ミユ「他の部分は? それに誰の生まれ変わりなの? 私……」
マリア「生まれ変わりとは違うわね……魂のかけらだから、その人の一部。ここでピンと来ない?」
ミユ「わからないよ!」
マリア「あなたがこの世で一番好きな人よ」
ミユ「え!?」
マリア「そう……デビルとトッシュの魂が息を引き取った後、合わさって……」
ミユ「ということは?」
マリア「ね? 安心した?」
ミユ「私は……もしかして!?」
マリア「古代のレイニーとユキちゃん! ね? 大丈夫!」

(1) 新たな星
(2) 不吉な予感
(3) 秘策
(4) 時を戻す
(5) 空は青い

〈登場人物〉
ユキ、レイニー、クレア、サニー、ドレミ、マリン、ハル、シルヴァ、ミユ、マリア

(1) 新たな星
 
 空を見ていた。真っ暗な夜空。隣にはレイニーと新しく仲間になったシルヴァという魔物の生き残りがいた。夜空には星があまたに広がっている。その中で新たな星が見つかったというニュースが舞い込んだ。私は毎日その星を探していた。けど、目が悪い私にはわからない。シルヴァが「グルル」と唸った。彼の頭を撫でると、甘えてきた。かわいい。思わず彼を抱きしめた。
 空を見ていた人がいる。それはドレミだった。彼女は最近精神が不安定で、レイニーから夜散歩するように助言をもらっていた。歩いてくる彼女を見つけ、私は手を振る。シルヴァの頭を彼女も撫でた。彼はエンデの人々とすっかり仲良くなっていた。ドレミと合流すると、彼女は突然言い始めた。「新しい星、なんだか近づいてきてる気がするんです……地球に」

(2) 不吉な予感

 クレアがwebで調べたところ、昔、現世ともう一つの世界は一つに纏っていたのだという。そのもう一つの世界とは魔界という世界。この悪夢のような世界と現世、つまり人間が住む世界は対峙していた。だが、何かの拍子でそれらは解き放たれていった。青い地球と黒い魔界の星は離れ離れになったのだが、それらを仲介するような形でできた星。それが黄泉の世界を形作る「黄泉の星」という。
「つまり、人は死んだら、別の星に行くっていうの?」クレアが独り言のように言う。「そうです。テレポートみたいな感じで、魂だけ黄泉の星へと移るんです。それが近づいてきてる……」冷静に答えたのは、またしてもドレミだった。サニーも頷いていた。彼らの表情に私も信頼のできる情報だと感じた。
 新しい星は日に日に大きくなり、私の目にも見えるようになった。それは現世の地球と同じような形状をしている。私はなんだか不気味に感じた。そして、この星が他の人々の恐怖の的になるのも、それは時間の問題であった。

(3)秘策

 国王軍。国王が構えている軍隊。普段は天災などが起きたときのための支援の役割を
果たしている。その国王軍がついに黄泉の星へと戦いの幕を張っている。現世の王は黄泉の星からやってくる「敵」を打ち返すことに躍起であった。人々はそれにあらゆる反応を示した。賛同する者。戦争は嫌だと反対する者。沈黙を貫く者。また、新しい星を領土にしようという世論もできていた。「雪と氷のファンタジー」で受けた地球の傷をまだ癒し尽くせていなかったためだ。私は……戦争は嫌。
 レイニーにせがんだ。「なんとかならないかな……?」彼は頭痛を持っているように頭を抱える毎日を送っている。「黄泉の世界でしょ? お母さんたちとも戦わないといけないかもしれないなんて……そんなの嫌だよ!」私があまりに勢いよくせがむものだから、彼は少し興奮して「わかってるよ! でも……俺たちにはどうすることもできない」私は彼から後退りをして呟いた。「ごめんなさい……無理言っちゃって」私は目に涙を浮かべていた。彼は、レイニーはこちらをじっと見つめている。しばらく沈黙と静止の時間の後、彼は言った。「一つ、考えが浮かんだ」私は涙目で彼を見つめた。心配するな。そう言うように彼は私を見つめて微笑んだ。私も涙目で微笑み返した。

 レイニーの策。まず、ハルに頼んで魔法で雪を降らせる。それもこの街だけじゃない。マリンが私の頭に手をやると、魔力が増大した。そのまま、世界中へと雪が降りしきった。人々は混乱した。夜、気づかれないように、マリンによって魔力が増大したドレミの魔法で、あらゆる建造物を赤道近くへと運んでいった。人々は自然と赤道近くへと居を移していく。
 これがレイニーの秘策だろうか。何を起こそうと言うのか。街から出ていく人人を見つめながら、私は彼に尋ねた。「赤道から遠くの土地には人が住まないようになったな?」私は不可思議なまま頷いた。「よく聞いてくれよ?」「うん……」「この広大な土地に黄泉の星の人々に住んでもらう」私は最初理解不能だった。「つまり……」「共存するんだ。黄泉の星の人々と」私は感動よりも驚いていた。「あの星の地下には地獄があるんだよ? そこから何か起きて、地獄の人たちが出てきたら……?」私は恐れていた。だが、レイニーは真剣な眼差しで私に告げた。「地獄に人たちが出てきたら、もし出てきたら、その人たちとも共存するんだ! 俺がなんとか説得して見せる!」私は再び涙目になった。この人はこういう人だ。私は忘れていたのかもしれない。そう、この人は。
「風の勇者ね……」誰だ? と言わんばかりに私たちは声の方へと体を向けた。すると、そこには。「母さん?」「お母さん!?」「久しぶりね……レイニー、ユキちゃん?」

(4) 時を戻す

「ジャックが、地獄でも……」久しぶりに聴いたその名前に私は少し震えていた。「ジャックが地獄に落とされて、最初は従順だったんだけど、苦しみに耐えきれなくなって、時の石を壊したの。警備されてたんだけどね? それで地獄はおろか、黄泉の世界の時間が途絶えちゃったの。それで、黄泉の世界が現世の地球へと接近していったの」なるほどというのはレイニーの方だった。私は気づいた。「けど、どうしてお母さんがいるんです? 星は?」
お母さんが微笑んだ。「もう大丈夫! ミユちゃんの夢に忍び込んで、魂と交流したの! そしてミユちゃんに頼んで、時間を黄泉の星へと送ってもらって一件落着!」
 私たちは力が抜けた。レイニーは、私の王子様は下を俯いている。「それに……」お母さんは続けた。「前の氷の事件以来、地球の季節がおかしくなっちゃたの。そこにあなたたちが雪を降らせて、時間の流れが安定したの」王子様は偶然の産物に何も言えない。だから、私が率先して、話を切り替えるように尋ねた。「あの、お母さんは? また魔法ですか?」お母さんはこれでもかというくらい笑顔を見せた。「伝えにきたの! ジャックはね……勝てないって気づいたのよ……」誰に? という表情を私はお母さんに向けた。「自分の口で言う? レイニー?」私は彼を見つめた。
「どうしたらいいか考えた。世界を平和にするなんて、俺には無理だ。だけど……」
 だけど? 「ユキたちを守る方法を真剣に考えたんだ。ユキたちのことを考えてたら、今回の案が浮かんだ」私の顔は真っ赤になって、下を見つめた。お母さんは笑った。「こう言う奴なの。この子は。ユキちゃんのおかげで生きてるようなもん!」私は少しはにかんで笑顔を作った。

(5) 空は青い

「お別れね、でもいいの? 次期国王の権利を断っちゃって?」お母さんはしばらく現世にとどまっていた。そして黄泉の世界へと旅立つときにレイニーに尋ねた。「名誉なんていらないよ。俺はそんなものなくたって生きていける」彼は勇ましい顔をしていた。お母さんは意地悪そうに顔を彼に近づけて言った。
「ユキちゃんがいたら生きてけるのよね〜?」レイニーははにかんだ。私も照れてはいたが、今回は大いに笑った。「じゃあ、あれ……?」どうしたのだろう? 「黄泉の星に向けて、光の階段ができるはずなんだけど、遅いわね〜! モーアの奴、何してんのかしら?」わざと苛立ちを明示的に見せるお母さんに恐る恐る尋ねた。「あのー? お母さんとモーアさんって?」「兄弟よ! 生き別れの!」レイニーはそのことを知らないようだったから、大いなる驚愕の趣を見せていた。「事故で亡くなっちゃったの、子どもの時に。んで、私を現世で見つけられなかったことを悔やん……で?」
 すると辺りから声が聞こえた。その声はこういうものであった。レイニーの果たした貢献は大きい。彼にも褒美を授けないといけない。その願いを聞き入れる、と。レイニーはかちんこちんに固まってしまった。しばらくして、お母さんがしょうがないわねーと言いながら言い始めた。「バカ! ユキちゃんに永遠の命なんて言うんじゃないの! 人は亡くなるもの! これは止められないの! だから、人は日々を大切にして生きてけるの!」
だったら……という声を彼が呟いた。ちらちらとお母さんを見つめる彼への返答は……「一緒にいていいよ?」
 レイニーは泣き崩れた。今まで見たことのないような、赤子のように泣き崩れる様。よかった。本当によかった。私も目から涙の雪が降り出した。
「見て? 空は青いわよ? あの空に再び旅立つまで、一緒にいようね?」「かあさん……」
「レイニー、ユキちゃん?」お母さんも泣いていた。「ありがとう。一生懸命、育ってくれて……」


マリア「やがて現世も黄泉の世界も整ってきてから、これは〈神〉って呼んでいいわね! 〈神〉が頑張って疲れ切った神さま……ミユちゃんの魂を休めることにした」
ミユ「それで神さまの魂とか、そんなこと言われてたんだ!」
マリア「そう、だから知っておいて欲しかったの!」
ミユ「でも、その〈神〉って誰?」
マリア「この世界」
ミユ「え!?」
マリア「現世も、黄泉の世界も、地獄も含んで魂を持った。それが神……あなたが産んだ最大の宝物よ」
ミユ「世界は生きてるの?」
マリア「そう! むづかしいけど聴いてね? この世界は呼吸もしてるし、涙も流す。風が吹いたり、雪も降ったり……生きてるから、成長もしたり、時折挫けたり……」
ミユ「世界を大切にしないといけないんだね!」
マリア「そうよ! 世界は生きてる。だから誰かが真似をすることもできる。けど、世界は世界だけ!」
ミユ「うん? 難しくなってきた……」
マリア「ごめん、ごめん! でも世界をいたわること。それが一番伝えたかったことよ」
ミユ「私に何かできるかな?」
マリア「みんなで考えるの! みんなが魂を通わせるとき、世界も喜んでイキイキとするから……」
ミユ「おばあちゃん?」
マリア「うん?」
ミユ「ありがと……」
マリア「え!?」
ミユ「なんか言いたかったの! ありがとう!!」

おわり。

和泉敏之の著作

 

・教師に向けた「輝く英語教育を夢見て」(2016/08/21 日本橋出版デジタル)
・短編小説 世界最高権力者(2016/10/22 日本橋出版デジタル)
・男性に贈る恋愛コミュニケーション術(2017/03/03 日本橋出版デジタル)
・中学生のための生きる力を養う勉強法(2017/03/03 日本橋出版デジタル)
・短編小説 風の少年(2017/03/18 日本橋出版デジタル)
・文化の世界(2017/06/17 日本橋出版デジタル)
・短編小説 雪の少女(2017/09/23 日本橋出版)
・短編小説 風雪の愛(2017/12/23 パブフル)
・短編小説 雪が降ってきた(2018/12/23 パブフル)
・短編小説集 風と雪が生む物語(2019/08/29 パブフル)
・短編小説 雪花の季節(2019/12/23 パブフル)
・短編小説 風雪の再会(2021/12/23 パブフル)
・詩集 家庭教師と生まれ変わりの少女(2022/02/27 自費出版
・英語教師 水田光希(2022/05/05 自費出版

AIのべりすとを使ってみて

AI(人工知能)には興味を持っていましたが、今回AIのべりすとというサービスを用いて、自分の小説の続きを書いてもらいました。

 

原文は『短編小説 本物の魔王(短編小説 風と雪が生む物語 より)』です。

 

以下の青字が人工知能が作った文章です。

 

家庭教師の仕事を終え、俺は家に着いた。「おかえり」ユキが笑顔で迎えてくれた。「ただいま」俺は静かに言った。俺は机に置いてある薬を飲もうとした。だが、薬がない。おかしい。ユキに聞いてみた。
「薬、どこいったんだ?」ユキは机の上を見渡した。ユキの顔に焦りが見えてきた。しばらくユキは黙っていた。「どこ?ひ俺は少し声を高くして言った。
「……ごめん」「うん?」「掃除してるときに……捨てちゃった」
 俺もユキも止まった。しばらく静止した後、俺は冷静になった。頭がパニックになるという冷静のなり方だ。「散歩してくる」俺は何も考えられず、言葉を発するだけで精一杯だった。
「私も着いてく……」ユキの表情から申し訳なさそうな気持ちが見えた。その表情が俺を刺激した。「来るな、一人で行く」ユキは何も言わなかった。俺は家を飛び出した。
家の外は静かで風が強い音がするだけだった。いつもなら聞こえる近所の子供たちの声や車が通る音が全く聞こえない。なぜこんなにも静かなんだろう。なぜこんなにも静かなんだろう。どうして俺は外に出たんだろう。俺は何のために生きているのか分からない。いや、生きる理由なんて無い。そもそも生きていたっていいことが無いじゃないか。
そうだ、死のう。死ぬことは良いことだ。死ねば何も考えなくて済む。それに死んだらみんな幸せになれる。死んでしまおう。
気が付くと目の前には崖があった。俺は無意識のうちにここまで歩いてきたらしい。俺は一歩ずつ歩いた。そして崖までたどり着いた。ここから飛び降りれば楽になる。さぁ行こう。俺は手に力を入れて足を上げた。あと少しだ。もう少しでこの苦しみから解放される。あと数センチ、手を伸ばせば届く距離だ。その時、「ダメ!」後ろを振り向くとそこには息を切らせたユキがいた。
「お前なんでここにいるんだよ!来んなって言っただろ!!」俺は怒鳴った。
「私は死にたいと思ったことがないし、あなたが死んだら悲しむ人がたくさんいることぐらい分かってよ!!だからそんな簡単に命を捨てようとしないでよ!!!」ユキの目からは涙が出ていた。俺はユキの言葉を聞いて自分がバカだと気づいた。俺はユキに謝った。
「ごめん」するとユキは笑顔で答えた。「許す!」

 

4回に分けて作成してもらいましたが、これを合わせておよそ1分以内で作成したものだから驚きです。

 

以上を踏まえて、人工知能によって小説家はいらなくなるのか、と考えられるかもしれませんが、私は単純にそうとは言い切れません。理由は以下の通りです。

 

(1) AIは世界観を深く自覚できない。

(2)AIのプロット設定には限界がある。

 

(1)ですが、AIは物語の土台にある世界観やメッセージを認識するには、まだ力不足かと感じました(これもすぐ追い抜かれそうで怖いですが…)。

特にファンタジーのような現実離れした物語を生き生きと描写するのにはまだ時間がかかりそうです。

 

(2)ですが、プロット設定を自動生成するには、まだ時間がかかると思われます。文体を真似て、それ以上のものを作ることをAIは得意としていることが分かりましたが、オリジナルのプロット作成及び自己生成はまだ人間の力量が物を言いそうです。

 

このように、人間の想像力を武器にすれば、AIは創作の強い味方になりそうです。文体を整えたりするときに、AIの力を借りることには、大いに賛同します。

 

また、オリジナルのアイディアがしっかりしていれば、予想を超える筋道を立ててくれるのは容易に想像できます。

 

私たちはこの現実をしっかりと受け入れ、創作と人工知能が対立しないようにする必要があるのではないでしょうか?

適塾記念会に入会して

2022年4月に大阪大学適塾記念会に入会しました。実質的には違うのですが、歴史が深い「適塾」の一員になれた気がして嬉しく思っています。

 

適塾は江戸末期、医師であり研究者でもある緒方洪庵先生が立ち上げた私塾です。大村益次郎福沢諭吉らを輩出し、「明治維新の立役者」の土台作りを行いました(もちろん、明治維新が正義というのであれば、です)。

 

この適塾の塾生は総勢1000名にのぼるともいわれ、多く塾生がここで猛勉強をしたようです。

 

聞けば、塾生には畳一枚と机が与えられ、夜遅くまで塾生の部屋の明かりが消えることはなかったそうです。

 

そのくらい猛勉強したのは、特段「出世」を望んだのではなく、単純に学問を追求する姿勢が多く熟成に見られたからだということです(娯楽はたまにある酒を飲むことくらいだったそうですから驚きですね)。

 

この適塾創始者緒方洪庵先生は、天然痘から日本を救った医師としても知られています。翻って現在の日本や世界。パンデミックという世界的な感染症拡大により、様々な問題が浮かび上がってきました。

 

疫学のみならず、人間のコミュニケーションにも分断を巻き起こしている今回のパンデミックですが、やはりよく勉強する者が知を総結して、立ち向かい、最終的には共存するという方向性を向くべきではないでしょうか(あろうことか、今回のパンデミックを「ビジネス・チャンス」と捉える向きもあるようですが、そのような言語道断な態度は無視します。そもそも一時的なcrisisに、何もビジネス・チャンスもあったものではありませんから)。

 

私としましては、ワクチンにも色々な意見がありますが、人間の免疫システムを向上させることが急務かと思います。

 

人間の免疫システムは言うまでもなく、「複雑系」のエコロジーです。これに対し、科学的思考法や文学的思考法を分ける、簡単に言えば「文系/理系」の区分をしてもあまり有益ではないような気がします。

 

本の学校教育も、様々な直面をしていますが、今一度子どもたちの『安全基地』として機能できる居場所システムとしての学校(あるいは学校教育)について思慮を深める必要がありそうです。それにはもちろん、学校外の要素をも大きく捉え、国家社会的、地域的なコンテキストについて今一度内省する必要があるでしょう。

 

話が大きくなりましたが、世界的な困難の時代に適塾などから学べることは多いと思います、適塾を単純に古いと切るのではなく、その後世へとつながる取り組みにもう一度着目したいと思います。

 

 

追記:

つい生煮えの思考を露呈してしまいましたが、複雑系の観点から言えることを付け加えることにします。

 

人間の社会もコミュニケーションから成立するシステムとするならば、そこに一律的な「管理」を行っても、分断を助長するだけなのは、この2年で明らかになったと思います。

 

そこで医学に関して文学的な知見からアプローチできるとすれば、まずは「当事者研究」が思い浮かびます。「成果」をベースにした浅薄な新自由主義的な価値観だけではままならないことを、当事者研究によって、共にある研究が披露されることも一手でしょう。

 

 

 

 

 

コミュニケーションにおける粒と波

コミュニケーションにおける粒と波

 

最近、ことばやコミュニケーションに関する探究を深めたくて、物語の読解・執筆は続けながらも、意識の統合情報理論の勉強を始めたり、甲野善紀先生のメルマガに登録したりしていました。一見矛盾するようなことばと身体をどうにか結びつけながら考えられないか、という問題意識がもとにありました。

 

勉強を続けていくうちに、関連性理論やルーマンの社会システム理論と繋がってきて、興奮を覚えました(いいものにすぐ飛びつくミーハー気質な奴ですので……)。何千年も人文知とは同じようなことを繰り返して別の様態で語っているのだなということも実感しています。そこに統合情報理論という科学知も加わり、極めて複雑な知識体系に圧倒されているだけなのですが。

 

ともかく、ことばを通じてコミュニケーションを行うときには、粒と波という量子力学の考え方が有益ではないかと思い始めています。あらかじめ申しますと、この分野については全くと言っていいほど勉強が進んでいないため、断片的かつ象徴的知識を自分なりに自分の都合の良いような色に染めていったというような言い方が正しいと思います。この分野を勉強しようと思っている方は是非ともご自身で量子力学の入門書などをお読みください。

 

さて。人間という脳を中心とした意識システムはそれ自体外から観察すると「粒」です。ですが、自己観察をすると、そこには意識という流れあるいは「波」が起きていると言えます。これらの意識が相互作用では、「波」を深く引き起こします。そのコミュニケーションというシステムは自己観察により、「粒」として一つ(以上)の有機体のように感じられるでしょう。

 

その「粒」は「波」により、それぞれの「粒」に混ざり合い、またもや自身の中で「波」として観察されます。これは批判的応用言語学による文化のダイナミックな変容とも相性が良い考え方と思われ、さらに考察を続けます。

 

実生活でも「」気が合う/合わない」というような言い方は良くされると思います。「気」とはむづかしい概念ですが、甲野先生から少しずつ学びたいと思っています。

 

これらの愚見を物語に応用させるならば、筆者は自身の「波」をできるだけ「粒」に見えるように記述し、それを読者の中で「波」として観察させられるような物語に構成やレトリックを使用することが重要かと思われます。

 

もちろん人によっては波立たないことでも、他人ならば大きな波を引き起こすこともあるでしょう。筆者は自身のことばに責任感を感じながらも、そこから巻き起こる可能性は自身の想像を超えていることを認識していく必要があると思います。良い筆者は、読者を良い筆者にする、という命題が頭に浮かびました。

 

 

取り止めのない文章になりましたが、メタファー(例え話)はそれだけでは危険な方向性に向かうこともあると思っています。一方、理論も然りです。しかし、それぞれの「波」をゆっくりと融合させると、説得力は増すのではないでしょうか?

 

メタファーだけでも「?」で、理論だけでも「?」なため、それぞれの限界を意識しながら、風が起きれば巻き上がるように、静かに動態する「粒」として捉えられるようになりたいものです。

 

 

参考文献
甲野善紀・平尾文著(2015)『できない理由は、その頑張り努力にあった』PHP研究所
マルチェッロ・マッスイミーニ、ジュリオ・トローニ著、花本知子訳(2015)『意識はいつ生まれるのか』亜紀書房

随想 2022/04/18

昨日、ルーマンと関連性理論の接続を目指す小論を掲載した。今年に入ってから勉強したことを自分なりにまとめたレポートである。この小論をもって、自身の哲学の「中締」としたいところである。

これからは平凡な生活とともに、文学について探っていきたいと考えている。2016年から始めた小説の文筆だが、一旦は中断することを思慮していたのは、前にも書いた通りである。

だが、35年の自分自身の人生を振りかえると、私が文学、特に物語にいかに救われてきたかを多々感じる。文学の素養は私にはないが、これをひとまず、人生の「答え合わせ」のようなものに位置付けたい。

目標をもち前進する生き方は否定しない。むしろ尊敬している。だが、生きるなかで沸き上がってくる目標あるいは課題に横にいて微笑んでもらうような生き方のほうに、私は憧れる。

ことばを突き詰めて考えるために、小説や詩歌をはじめとした文学と隣り合わせで座ることを、やはりというべきか、これからの自分の研究テーマとしたい。

ある場所を「いつもの風景」にすること。それは私にとって想像や創造に振り回されながらも、そこで座ってと佇むことを意味しているのかもしれない。その場所から少し周囲を見渡せば、限りなく映る意味もたち現れてくるかもしれない。

そんなことを今は真面目に考えている。


2022/04/18. 大阪にて

コミュニケーションにおける社会学と認知語用論の接点

コミュニケーションにおける社会学と認知語用論の接点

           和泉敏之

 

1.    序論

 

1.1.       コミュニケーション
 コミュニケーションについて様々な視点による考察を行う。1つの理論のみに依拠するよりも、親和性の高い領域を結合させていることに本小論の意義がある。今回、社会学と人類学の背景を持つ認知語用論の理論を用いる。
 コミュニケーションとは複合性の縮減のための選択である。その際、選択された可能性は意味として現実性と結合される。

 

1.2.      研究課題
なぜ選択される可能性とそうでないものがあるのか。

 

1.3.      方法
 関連性理論によってルーマンのコミュニケーション理論を再読する。
 心理システムについての再考が必要である。これは人間の認知メカニズムの言及を目標とする。

 

1.4. 結果
関連性のある可能性が意味として現実性と統合される。

 

2.    本論

 

2.1.  関連性理論
・認知環境
 「認知環境とは、個人が精神的に表象したり、真実と受け入れたりすることのできる想定の集合体である(Sperber. D. & Wilson. D. 1995, p. 46)。」
・関連性の原理
 「コンテキストにおいて、認知効果を引き出す場合あるいはその場合のみにおいて、その想定は関連性があるという(前掲書  p. 122)。」
 「人間の認知は関連性の最大化に合わせて動く傾向がある(前掲書 p. 260)。」
 

2.2.  社会学と認知語用論の接点
 コミュニケーションにおいて、関連性の低い可能性は潜在性として存在し、消滅しているわけではない。関連性の高いものが顕在化され、コミュニケーションは接続されていく。このとき、関連性の高い可能性が意味として、現実性と統合される。
 つまり、コミュニケーション(相互作用システム)は複合性の増大に抗して進んでいくことになる。複合性の増大と縮減の間にさらされたコミュニケーションは極めて不安定なものである。

 

3.    結論

 偏重的な意味理解を防ぐ必要がある。また、文化への鋭敏な感性が重要視される。なぜなら関連性の高い可能性を意味として理解する場合、他我に対して文化からかけ離れた可能性を顕在化させてしまうことは多々あるためである。この場合、意味理解は帝国主義的理解に陥ってしまう。
 さらに心理システムについて研究を深めるために、脳の神経科学の知見などを取り入れることが今後の課題である。

 

参考文献
Sperber. D. & Wilson. D. 1995. Relevance: communication and cognition. Blackwell.
Wilson. D. & Sperber. D. 2012. Meaning and Relevance. Cambridge.
ルーマン著、佐藤勉監訳(1993)『社会システム理論(上)(下)』恒星社厚生閣