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風と雪

和泉敏之のブログ

生成文法の基本(代名詞に注目して)

新型コロナウイルスの関係で一日のほぼ全てを家で過ごしています。そんな中、昔まとめた読書ノートを再読していました。今回からしばらく読書ノートを基に記事を書いていこうと思います。家で過ごす皆様の時間を少しでも豊かにできればと願っています。

 

その第一弾は「生成文法」です。この分野は私のあたまでは理解が難しいのですが、入門書を読んで、その奥深さだけは実感できました。

 

ノーム・チョムスキーを中心に成立した生成文法ですが、今回はその基本中の基本を自分なりにまとめます。

 

<言語と知識>

 

生成文法では、「知識」は「能力」と区別され、何かしらのメカニズムにより適切な情報を抽出する手を持つものだとされています。

 

特に言語では、遺伝的に決定されている言語の原理、遺伝的に決定されている一般的な学習メカニズム、そして子どもの言語経験という3つの要因が重なっているとされています。この経験は「パラメーター」と呼ばれます。

 

 データ → 言語機能 → 言語 → 構造化された表現

 

<束縛理論と代名詞>

 

子どもの言語習得について、彼/彼女らは無意識的に規則を使用します。その規則について一例を挙げます。

 

    (a) The man who wrote it destroyed the book.
    (b) The man who wrote the book destroyed it.

 

まず、(a)ですが、代名詞itが現れる句、すなわち[The man who wrote it]の中で束縛されます。この句は代名詞の句の最小のものとして「領域」と呼ばれます。ここで代名詞はその領域内で自由でなくてはいけないという規則があります。これが(私の理解が及ばない)「束縛理論」の基本ということです。

 

一方、(b)ですが、[The man who wrote the book] は1つの句で、itは領域外です。この場合、itはあいまい文をもたらします。

 

このような規則を子どもは無意識的に使用する(習得していく)謎があります。

 

<まとめ>

 

以上、生成文法の基本を、代名詞を例に簡単にまとめました。現在では生成文法のみに依拠するのは困難ですが、言語特に言語形式について思慮を深めることを目標とすると、生成文法は大いに興味深い分野だと思います。

 

学校英語教育の歴史でも、生成文法が大いに栄えた時代はあったようですが、生成文法の代名詞(と私が勝手に思っている)である樹形図などをそのまま学習者に指導し、難しすぎると言われたこともあるようです。ここでは取り上げませんでしたが、生成文法における「深層構造」を「表層構造」として提示し、成果を上げてきた実践者として田尻悟郎先生などが挙げられるかと思います。

 

これまで私は「意味」にばかり焦点を当ててきましたが、もっと「形式」にまで視野を広げなければならないと反省しています。これからも自分のペースで言語について意識を高めたく思います。

 

参考文献

ノーム・チョムスキー著、田窪行則、郡司隆男訳(1989)『言語と知識――マナグア講義録(言語学編)』産業図書

V.J.クック著、須賀哲夫訳(1990)『チョムスキーの言語理論』新曜社